Sangsun Bae
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もっとも無に近い黒と白の平面にベ・サンスンは絵画を生成させる、その手法は二つあり、ともに線描によって成る。ひとつは、青墨をまぜたジェッソの白いキャンバス画面に、木炭でひいた線や、手の指ですり込んだ線が、無数に生まれて連なり、面や、太い線となって命の脈動するような感動をたたえる。
もともと人体デッサンに基づく抽象化した輪郭線から出発していることもあって、有機的な線の韻律があり、それが生命のつながり、結びのかたちにもつながっている。
もう一つの手法は、黒の布地の画面に細筆による白の繊細、軽快な描線を無数に積層させ、描き残した黒い穴などの画背の無限の深淵が広がっているような描面である。
情緒をそぎ落とした黒と白の禁欲的ともいえる色と一本の線から絵画を成り立たせていくベ・サンスンの作品は、感覚的な色のふるまいや作法の新奇さに甘えた近年の絵画動向とは対極の、根源的な描画に足場をおいている。
その真摯な創作姿勢から生み出される絵画の生命力を期待とともに見守っている。
大田垣 寛(美術評論家)
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